なんとも大仰な。
J-SOXによる内部統制は“始まり”にすぎない – ビジネススタイル – nikkei BPnet:
2008年4月以降に始まる事業年度から、上場会社は、「金融商品取引法」(金商法)が求める「内部統制報告制度」に則った「統制」を実践しなければならない。
第1回ということで連載記事なのだろうけれど,つっこみどころの多い感じ。
言葉(の遣い方)の問題か,理解の問題か。
内部統制報告制度は統制の「方法」について指示をしているものではないので,
「内部統制報告制度」に則った「統制」
なんてものはない。
次の
J-SOXによる内部統制は“始まり”にすぎない – ビジネススタイル – nikkei BPnet:
金商法が定める「内部統制」は、会社法が求める「内部統制」の目的を1つに絞り、実施基準や罰則規定などを具体化したものだ。
会社法が求める「内部統制」には、4つの目的がある。「業務の有効性・効率性」、「財務報告の信頼性」、「法令遵守」、「資産の保全」。
という下りは,ぜひ葉玉先生のブログや
会社法であそぼ。:内部統制システム整備義務(1):
会社法の改正の目玉の一つが,362条5項の内部統制システムの整備義務です。
同項は,大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備(362条4項6号)」を決定しなければならないことを定めています。
岡村弁護士のコラムを改めて読むべきだと思う。
「内部統制=日本版SOX法(企業改革法)」という誤った図式(中):岡村久道 IT弁護士の眼:ITpro:
会社法の条文そのものを検索しても、「内部統制システム」という言葉はおろか、「内部統制」という言葉もまったく使われていない。
それに代わり、「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」を、株式会社における経営陣の職務としている(会社法348条3項4 号、362条4項6号、416条1項1号)。これが前回述べた会社法にいう「内部統制システム」の正体だ。
(いずれも下線は引用者)
つまり,会社法における「内部統制」(あるいは「内部統制システム」)の目的を条文に則って読むなら,「株式会社の業務の適正を確保するため」で,もちろんこれは,上記4つの目的を包含するものだろうけれども,書き方として適切ではない。
この会社法に,会社法施行規則を併せて考えるとするなら,「内部統制」の目的はこうなる。
・取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理
・損失の危険の管理
・取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保すること
・使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保すること
・当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適性を確保すること
(会社法施行規則 第98条,100条,112条)
一方で,当該連載の記者が上げている「内部統制の目的」のオリジナルはもちろんCOSOレポート。
ただし,そこに書かれている内部統制の目的は3つ。
Internal Control – Integrated Framework | Executive Summary:
Internal control is broadly defined as a process, effected by an entity’s board of directors, management and other personnel, designed to provide reasonable assurance regarding the achievement of objectives in the following categories:
・Effectiveness and efficiency of operations. (有効で効率的な業務遂行)
・Reliability of financial reporting. (信頼性のある財務報告)
・Compliance with applicable laws and regulations. (関連法規の遵守)
じゃあ,「資産の保全」は,というと
特集 日本版 SOX 法 : 新法が求めるのは経営管理システムの再確認である 1/3 ページ:
日本版では、構成要素をより汎用的な基本的要素と定義として「IT への対応」を加え、目的に資産の保全が加わった。
「ITへの対応」が加わったことの問題は別のエントリーで書いたので割愛。
J-SOXによる内部統制は“始まり”にすぎない – ビジネススタイル – nikkei BPnet:
有価証券報告書の数字が果たして信頼できるものなのか。企業は、これまでも行なっていた財務諸表の監査に加え、財務諸表を作成する過程(内部統制システム)と、その運用体制も外部監査人に報告し、監査を受けなければならない。
「これまでも行っていた財務諸表の監査」に内部統制の信頼性(整備・運用状況)の検証は含まれていたはず,というのがぼくの意見であり,そのあたりについても別のエントリーで書いたので割愛するけれども,「財務諸表を作成する過程(内部統制システム)」と括弧書きにするのなら,「財務諸表を作成する過程(決算・財務報告プロセス)」。
参考:「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準のあり方について」(平成17年12月8日 企業会計審議会 内部統制部会)
こういうあたりの理解(あるいは誤解)が「始まりにすぎない」のではないかという危惧はあるものの,次回以降の「さまざまな角度からの識者の意見」を興味深く読もうと思うのでありました。
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