ノーチェックだった「チーム・バチスタの栄光」を,映画化されたらしい&文庫版が出た,というので読んでみた。
お医者さんが書いた本というと,いっとう最初に読み通せなかった「エンブリオ」を思いだしてしまうので,敬遠していたのだけれども。
1冊にしても問題ない分量に思えたから,文庫本がどうして上下2巻に分かれているのか,分からなかった。
しかしながら,読み終わったときの感想は,「これは上下2分冊にした方が楽しめるんだ」。
理由は2つある。
1つは,上巻と下巻で物語の中心人物が変わるから。
あるいは,パッシブ・フェーズとアクティブ・フェーズが切り替わるからと言ってもいい。
そしてそれはスピード感の違いにつながっている。
この構成は面白いと思う。
1つめの理由が構成にあるとしたら,2つめの理由は,著者の筆力が成長していることを読み取れること。
上巻を読み始めたときには,「うーん。やっぱりお医者さんの書く文章は・・・」という印象。
たしかに事実と場景は的確に書かれているのだけれど,登場人物の心情描写がついてこない。
読み手にうまく感情移入をさせてくれない文体が,ページを捲る手を遅くさせる。
ところが,下巻に入るや,一気に読み進めることができた。
キャラの立った人物が登場したこともあるけれども,語り手と主要キャラクターの視点がずれた(そういう手法をとることにした)ことで,語り手に感情移入をせずとも展開についていくことができるからだと思う。
ひとつの小説で,著者の筆力が上がったことを感じた本というのは,はじめて。
人物造けい(造詣?造型?造形?)は特段優れているというわけではない。
エピソードの差し挟み方も「いかにも」っぽい。
しかし,なにしろ成長の早さがすごい。
「このミステリーがすごい!」大賞受賞作(2005年)。
しかもこれがデビュー作。
著者の成長をもっと見てみたいので,本作と同じ主人公コンビの作品(“ナイチンゲールの沈黙” (海堂 尊)
,“ジェネラル・ルージュの凱旋” (海堂 尊))も読んでみたいと思う。
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