角川書店から「謹呈」と記された書籍小包が届き,あけてみると彼女の新しい歌集があった。
「ぼんやりしているうちに」と題されたその歌集の,柔らかな光を映す草原をあしらった表紙が,彼女のように思える。
考えてみると,彼女とも数年会っていない。
彼女が,大学の研究室に勤めるために東京に越してきた年に,彼女の甥っ子と同じ名前の店で食事をして以来かもしれない。
こうして届けてくれた歌集を読むことで,ぼくは彼女の何年かを,そのほんの「かけら」を知る。
- 大学院の博士課程に進学したとき,取り残されるような不安を感じていたこと
- 実験が思うように進まずに,夜中の研究室にひとり残っていたこと
- 白衣を着たまま北部キャンパスを散歩するのが好きだったこと
- 大学時代の9年間は,過ぎてしまえば短いものだったように思えたこと
- 東京に引っ越したこと
- 研究を続けていること
- 手術をしたこと
柔らかい感性はそのままに,彼女の歌は少しずつ,新しい「堅さ」を持とうとしている。
そして,少しずつぼくが既視感を覚えざる歌たち。
川ひかる町の記憶を衣擦れのごとく纏いて東京にいる
東京の生活はどうですか?
圧倒するようなビルとひといきれにやられていませんか?
ぼくはまた,川の流れるこの町に戻ってきました。
第三歌集の出版おめでとう。
素敵な歌にたくさん会えました。
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