公認会計士・監査審査会が,「なごみ監査法人に対する検査結果に基づく勧告」というのを発表している。
これは,なごみ監査法人の運営が著しく不当なものとして,金融庁に対して,当該監査法人への行政処分その他の措置を講じるように勧告するもの。
著しく不適当な運営として挙げられているものを要約すると下記のようになる。
- 監査の品質管理の重要性に対する認識が低く,品質管理態勢が不十分である
- 代表者の下に社員の統率がとれておらず,組織的監査遂行の態勢が不十分である
- リスク・アプローチによる監査が実施されておらず,十分な監査手続を実施せずに監査意見を形成しているケースがある
乱暴な言い方をすれば,
監査法人の体をなすために頭数を揃えているけれども,実際はバラバラで組織的監査を行う状況にない。したがって,監査法人として求められる内部管理や監査の品質管理ができていなし,さらに監査業務(リスク・アプローチによる監査)自体も適切に行われていない。
とも読める(read between the lines)勧告。
なごみ監査法人がどういう経緯で設立されたかは,資料が見つからなかったので分からないけれども,同じような問題を抱えている監査法人はいくつもあるような気がする。
オピニオン・ショッピングのために作られたような監査法人もあるといわれるし。
会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所) – なごみ監査法人に対する検査結果に基づく勧告について:
監査法人の社員の数は法律上最低5名となっています。ひとりでも抜けると監査法人として存続できなくなります。そうならないよう社員に対する管理を甘くしているというような書きぶりですが、それをいいだしたら、5人の会計士を集めて監査法人を設立しても、実質的に監査ができないということになってしまいます
とあるけれども,「5人の会計士を集めて監査法人を設立すれば,監査ができる」という状態は逆に問題があるだろうと思う。
監査への参入障壁は決して高くない。だって,公認会計士が5人いればいいだけだから。
参入障壁が高くないからこそ,事後チェックによって適正性を担保するための仕組みが必要になる。
巨大化する不正のコスト 赤福に見る偽装拡大と露見|山崎元のマルチスコープ|ダイヤモンド・オンライン:
各種の規制が自由化され、チェックは事後というシステムが増えつつある。この種の仕組みの場合、不正が明らかになった場合の罰則を重くしなければ、自由化した状態を維持することに困難を来す。厳罰により「不正を行うことの期待コスト」を高めないと、システムが上手く回らないのだ。これは各種の自由化の進展と表裏をなすトレンドなので、不正に対する厳格化の方向性は一時的なブームではなく、今後さらに厳しさを増していくはずだ。
問題は,日本公認会計士協会という自主統制組織に加えて,公認会計士・監査審査会という行政組織があって,同じようなことをしている(ように思える)こと。
屋上屋を架しているだけではないかとも思えるこの公認会計士・監査審査会の役割は,金子晃会長のインタビューによると,
最後に、我々公認会計士・監査審査会の性格ですが、公認会計士法で定められている規定等を総合的に評価しますと、我々の組織は、公認会計士及び監査法人を「取り締まる」ということではなく、モニタリングを通じて公認会計士の監査の信頼性及び公正性を確保する「支援活動を行う」ものです。そういう意味では国の機関が行う公共サービスの一つとして、公認会計士及び監査法人の監査業務の後方支援をしていくという性格の組織であると理解しております。
とあって,「監査業務の本来のあり方を確立していく」ために「公認会計士及び監査法人の監査業務の後方支援をする」ことらしい。
今回のなごみ監査法人に関する勧告を見ただけではダメ出しにしか思えないけれども,これが中小監査法人の現実に対する苦言なんだとすれば,日本公認会計士協会は中小監査法人の監査の品質を向上させるための取り組みを加速させないといけないんだろう。
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