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届けもの

右脳だ,左脳だという話を最近,いくつかした。

友人に歌人がいる。
(友人が歌人,なんだかしっくりこない語呂だ)

ぼくはずっと,彼女に届けものをしなくてはいけなかった。
ふたりともこの数年は東京に住んでいた(住んでいる)というのに,
いつもつい,タイミングを逃してしまう。

もうずいぶん前の春の夜。
ぼくの車で夜桜を見に行く計画だった。
大学の図書館で待ち合わせて,中古のVW Golfに乗り込み,
「さあ,出発!」
とイグニッション・キーを回したところで,
「ドボッ」
バンパーから,むしろ危険な爆発音がして,そのまま動かなくなった。

JAFのレッカー車に曳行されて,そのまま修理へ。
そして夜桜は見に行けず終い。

あのタイミングを逃したことで
変わったことがあるんだろうか?

久しぶりに連絡をとると,
引っ越しの案内を出していない迂闊さに気付いた。

メールで引っ越し先の住所を伝えたら,
数日後,「謹呈」という赤い文字が書かれた封筒に本が一冊入って届いた。
5年振りの歌集かと思いきや,

「現代短歌最前線 新響十人」

すこし肩すかしをくらったものの,
なんども読んだ彼女の歌を,また読み返してみた。

ねこじゃらしに光は重い 君といた全ての場面を再現できる

せつないやわらかさを纏っている歌は,
どこかぼくの心象風景に重なる部分があるようで,
すっ,と心に入ってくる。

好きな歌を探しながら,
ーああ,彼女は農学博士だ,
右脳と左脳をじょうずに使い分けているんだなあ
と思った。

一枚をひろいて今日をかたちある葉っぱの記憶のなかに収めよ

そして彼女への届けものを出すために,郵便局へ行った。

出版社は,前に働いていたところのすぐ近くだった。
Book Tanka
“現代短歌最前線新響十人” (石川 美南)

Filed under: Life

One Response

  1. 通りすがり says:

    ご友人の歌、いい歌ですね。
    「新響十人」にもその人の歌がたくさん納められているのでしょうか。
    読んでみたいと思いました。

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