アーバンコーポレイションと株主は骨までしゃぶられたということ
2008-08-14 at 22:11 | In Accounting | No Commentsこの記事を読んで,薄ら寒い気持ちになりました。
東京アウトローズWEB速報版: 【ミニ情報】東証1部「アーバンコーポレイション」、CB300億円に絡んでBNPパリバ側は「空売り」を仕掛けていた(2):
「CBの権利行使価格344円という数字に惑わされて、アーバン株を買った一般投資家の多くが損を出している」
こう語るのは、あるベテラン証券業界紙記者。「パリバが7月11日に300億円を払い込んだと聞いた一般投資家の多くは、200円台なら買いと判断したようだ。少なくとも行使価格344円を抜くような株価の動きに転換するハズだと読んだ。ところが、実際の株価は11日以降も下落を続けた。周知のようにアーバン株は現在、100円前後と惨澹たる有り様だ」
では、アーバン株を売り崩しているのは、どこか?実は、BNPパリバそのものだったのである。
この記事(の前段)によると,BNPパリバは5月頃からアーバンコーポレイション株(当時1株600円くらい)を空売りしていて,7月11日に新株予約権を行使して割当を受けた株式をその空売りの決済に使ったらしい。
空売りしている場合,決済時の株価が空売り時の株価を下回るほど売却益が出るから,BNPパリバはアーバンコーポレイションの株価にはどんどん下がってほしい。
加えて,アーバンコーポレイションとBNPパリバのスワップ契約には,売却日の株価があらかじめ設定された「下限価格」を下回った場合は,BNPパリバは売却代金の一部をアーバンコーポレイションに支払う義務を負わないとあるから,ここでもやっぱりBNPパリバはアーバンコーポレイションの株価にはどんどん下がってほしい。
つまりいずれにせよ,BNPパリバは,売却時の株価が新株予約権の行使価格(344円)を下回っても損をしないどころか,空売りの反対決済時の売却益というプラスと,売却代金をアーバンコーポレイションに支払わずに済むというプラスと,2つの点で美味しいと。
結局,アーバンコーポレイションと株主はまんまと出し抜かれたということですか。
個人的に非情に興味をそそられるのが,この恐るべきスキームを誰が,どの時点で立案し,どうやってそれをアーバンコーポレイションに飲ませたかという点。
生き馬の目を抜くマーケットの恐ろしさを窺い知って,薄ら寒い気持ちです。
アーバンコーポレイションの不適時開示
2008-08-14 at 00:16 | In Accounting | No Comments春先から噂のあったアーバンコーポレイション。
民事再生の申請と同じ日に爆弾も投げていくとは。
本日(8月13日)民事再生を申し立てた東証一部の会社の適時開示の内容は、かなり問題ではないでしょうか?
これは適時開示(タイムリーディスクロージャー)とは言えません。
全然タイムリー=時宜にかなっていないもの。
問題の開示内容を要約すると,
(1)2008年6月26日に公表した,BNPパリバに割り当てる転換社債型新株予約権付社債の資金(300億円)使途は,短期借入金の返済には充当できず,スワップ契約に基づくBNPパリバへの支払に一旦充当される。
(2)2008年7月11日以降,BNPパリバが新株予約権を行使して割り当てを受けた株式(1株あたり344円)を市場で売却した代金の一部がアーバンコーポレイションに支払われるので,アーバンコーポレイションはこれを短期借入金の返済に充当する予定にしていた。
(3)アーバンコーポレイションの株価が当初の想定を超えて下落したためにBNPパリバは思うように株式を売却できず,本日アーバンコーポレイションが民事再生法の適用を申請したため,BNPパリバとのスワップ契約は反故になり,アーバンコーポレイションは58億円の損失が発生することになった。
取引をごく単純化すると,
(1)転換社債型新株予約権付社債の割当
UC <<< 300億円 <<< BNPP
(2)スワップ契約に基づく支払
UC >>> 300億円 >>> BNPP
(3)新株予約権の行使による株式の割当と資金の払込み(DES)
UC >>> 87,209,302株相当の株式 >>> BNPP
UC <<< 300億円相当の転換社債 <<< BNPP
(4)株式売却代金の授受
UC <<< 売却代金の一部 <<< BNPP <<< 売却代金 <<< 株式市場
BNPパリバが目論見通り株式を売り抜けられたかどうかは分かりませんが,
タダ同然で手に入れた株だから別にどうということはないのでしょう。
一方で,アーバンコーポレイションが結んだスワップ契約の内容を読むにつけ,
悲しくなるほど足下を見られています。
「この難局さえ乗り切ればなんとかなるはず」と考えて,藁にも縋る思いだったのかもしれませんが,選んだ方法は株式市場に対する背任行為に等しいと思います。
Toshi先生が書いておられる「元検事総長さま」は同日に健康上の理由から社外取締役を辞任されています。
元検事総長でさえこの状態ということは,細野祐二氏が糾弾するように「検察官の会計知識」というのは,相当疑わしいと言えるのかもしれません。
もっともこのケースは,「会計知識」というよりも倫理観の疑われる事例でしょうけれど。
それにしても,アーバンコーポレイションの「平成20年3月期決算短信」や「平成20年3月期中間決算短信」の訂正の内容を見ていると,監査法人の対応の拙さが露呈しています。
今回のBNPパリバとの契約については,どこまで監査していたのでしょうか。。。
それがわたくしの役目でございますれば
2008-08-11 at 23:49 | In Life | No Comments「篤姫」を見ている。
徳川家定の死の描き方がなんとも物足りなく感じていた。
篤姫と家定,離れていた二人の距離が少しずつ縮まり,お互い心を通わすことができた矢先の別離。
もっと悲哀を誘う見せ方もできただろうし,視聴者(少なくともぼく)はそれを期待していたと思う。個人的には「新選組!」(2004年)で山南敬介の切腹を描いた「友の死」(第33回)のときようなカタルシスを求めていたのかもしれない。
そこへいくと先週の「桜田門外の変」(第32回)における井伊直弼が死に臨む場面は,「篤姫」の第一の名場面に挙げられると思う。
あの狭く暗い茶室で向かい合った篤姫と井伊直弼の間に横たわる息も詰まるほどの緊迫感。
多くの人命を犠牲にしてまでも幕府の威信を護るのが「わたくしの役目」と言い切る井伊直弼の覚悟を秘めた決意。かつて薩摩で会った調所広郷と同じ覚悟をそこに認めて,己の使命を愚直に誠実に果たそうとする人間を見いだした篤姫は,井伊直弼がただの冷酷非情でないことを知る。
一方の井伊直弼も,自分を憎んでいるであろう篤姫が茶の味を賞めるその素直さに驚き,その二面性のなさと心の柔軟さが家定の心を捉えたのだろうと認める。
篤姫が井伊直弼のために作ったという懐布(ハンカチ?)を見る瞳には,ほんの少し柔和な色が浮かんでいた気がする。
「これこそが井伊様が到達された一期一会の極意でございました」
というナレーションは,すぐ先に待ち受ける運命を知るとき,鳥肌が立つほど。
久しぶりに凄みのある人間ドラマを見た。
追記(2008-08-12)
最高視聴率だったそうです。
「篤姫」視聴率26・4%、内柴金を上回る - 芸能ニュース : nikkansports.com:
10日放送のNHK大河ドラマ「篤姫」の視聴率は関東地区で過去最高となる26・4%(関西24・4%)を記録し、北京五輪柔道男子66キロ級の内柴正人の金メダル獲得を生中継したフジテレビ系の「北京オリンピック2008」を上回った。「篤姫」のこれまでの最高は、篤姫=天璋院(宮崎あおい)の夫家定(堺雅人)と父斉彬(高橋英樹)が亡くなった7月13日放送分の26・2%。NHK広報部は「今回は『桜田門外の変』という有名な事件を描いた回だったということと、お盆休みに入って在宅率が高かったこともあるのではないか」と話している。
経営者の器
2008-08-11 at 11:56 | In Life | No Commentsこれを読んで,あのエコノミストもこんなことを書くのか,あれは漫画だよ,と思うひとには原文にあたることをオススメ。
日本の経営者は「島耕作」見習え…英誌が大胆・賢明さ絶賛 : 経済ニュース : マネー・経済 : YOMIURI ONLINE(読売新聞):
「日本の経営者は『社長 島耕作』を見習うべきだ」──。英誌エコノミストは8月9日号で、講談社の人気連載漫画・島耕作シリーズの主人公で、今年5月にトップに上り詰めた島耕作社長(60)を、「日本の理想の企業トップ」として紹介した。

原文はこちら
島耕作が理想の経営者かどうかは知らないけれど,その器でないひとがポジションを取ったときは悲劇だろうなあ。
「叩いて(物理的にではなくて精神的に)部下は育つ」という考え方をしているひとがいる。
かつて知っていた会計事務所の社長はそういうタイプ。そして最近見知った社長もそういうタイプ。
ぼくもかつては「叱って育つタイプと褒めて育つタイプがある」と思っていたこともあったけれど,今は「人は褒めなきゃ育たない」と思う。
そもそも,「育てる」なんて,おこがましい。
Face value | A question of character | Economist.com:
It would have been more realistic if Mr Shima had been forced to end his career parked at an obscure affiliate company in the hinterland. With the ascension of the archetypal corporate rebel to the top job, Mr Shimaユs story has gone from smart social realism to being just another fairy tale.
島耕作なんておとぎ話だ。
運用評価は(ry
2008-08-08 at 03:49 | In Accounting | No CommentsTags: 内部統制
まあ,経営者が評価手続を理解していなくても,それ自体が問題になるとはあまり思えないけど。
ビジネス法務の部屋: 内部統制報告制度(J-SOX)運用に関する具体的提言(追補):
こういった評価マニュアルを拝読していて新たに疑問が生じるのでありますが、もし評価手続きについての理解不足が経営者(実際には現場担当者)にある場合、これはおそらく、一般に公正妥当と認められる経営者評価の基準に準拠して内部統制評価が行われていないとして、内部統制監査人としては「不適正意見」を出すことになると思います。
経営者が,一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して財務諸表を作成していることをそれほど意識しているとも思えないので。
ただし,Toshi先生が留保しているように,現場担当者(運用評価の担当者)が評価プロセスを理解していなければ,それは経理担当者が会計を理解していないのと同じように問題ですが。
そういう場合にはやっぱり,監査の現場で内部統制を評価してきた会計士に運用評価をアウトソースするのが適切だと,少し商売っ気の出たエントリーを書いて,もう寝よう。
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